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世界初の快挙 阿佐海岸鉄道のDMV(デュアル・モード・ビークル)

2022/02/19 四国・その他

写真:試運転中のDMV

DMV(デュアル・モード・ビークル)


DMV(デュアル・モード・ビークル)はマイクロバスを改造した車両で、鉄路と道路の両方を走行することができる画期的な乗り物です。阿佐海岸鉄道では2021年12月25日より世界初の本格的な営業運転を開始しています。

世界初ということですが、鉄路・道路の両方を走行できる車両は1950年代には実用化されており、過去には旧西ドイツではシーネンシュトラーセンオムニバスというものが営業運転を行っていました。
日本でも国鉄がアンヒビアンバス(アンヒビアンは両生類という意味)の試験を行ってました。しかし、両者とも鉄路走行時は車両の両側に専用台車の取り付けが必要で、何かと手間がかかる乗り物だったのです。

阿佐海岸鉄道で営業運転を開始したDMVは専用の台車を必要とせず、モードインターチェンジという簡易的な設備さえあれば、自力でモードチェンジを行うことができます。このコンセプトで本格的な営業運転を開始したのは世界初の快挙といえるでしょう。

DMV導入の背景

写真:鉄道モードで走行中のDMV 開業のヘッドマークを掲げている

DMVを導入した阿佐海岸鉄道とは


阿佐海岸鉄道(あさかいがんてつどう)は徳島県海部郡(かいふぐん)海陽町(かいようちょう)にある第三セクターの鉄道会社です。
阿佐海岸鉄道の鉄道路線である阿佐東線(あさとうせん)は、もともと国鉄の阿佐線(あさせん)として建設が進められていました。阿佐線は徳島県にある牟岐線の牟岐駅と、高知県にある土讃線の御免駅を結ぶ計画で、実現していれば徳島~高知まで室戸を経由したルートになる筈でした。しかし、1980年に施行されたいわゆる国鉄再建法により建設がストップしてしまいます。

工事は凍結されたのですが、構造物が殆ど完成している部分もありました。これらをなんとか利用できないと考えた結果、海部(かいふ)~甲浦(かんのうら)間を第三セクターとして開業させることになったのです。ちなみに高知側は、土佐くろしお鉄道によりごめん・なはり線として開業しています。

しかし、もともと工事が凍結されるよな区間のため沿線人口も少なく利用客は殆どいません。輸送密度は約170人/日だったそうで廃止の危機が迫っていました。
そこに、一筋の光が差し込みます。
JR北海道が赤字ローカル線向けに、マイクロバスを改造した鉄路と道路を行き来できる車両を開発していたのです。
それがDMV(デュアル・モード・ビークル)でした。

当初は東京五輪に間に合わせる計画でした。しかし、車輪アームの耐久性について問題があることが分かったため、車輪アームの設計変更や再試験により2021年12月25日にずれ込みました。

阿波海南駅

写真:DMV乗降場 向かって左側が上り停留所(阿波海南文化村方面) 右側が下り停留所(宍喰・室戸方面)

牟岐線の終点 阿波海南駅


牟岐線の終着駅は、少し前まではもう一つ先の海部(かいふ)駅でしたが、モードチェンジのための設備を作りやすいという理由で、JR四国より阿佐海岸鉄道に移管されました。

阿波海南駅の目の前にDMV用の停留場があるので、鉄道でDMVに乗りに行くのであれれば、阿波海南駅から乗るのがおすすめです。正面に見える建物は阿波海南駅前交流館で、コインロッカーやスマホ充填機そしてトイレもあります。

駅前にはコンビニやお菓子屋さんもあるので、利便性はまあまあ良い方ではないでしょうか。

モードインターチェンジ

写真:モードンターチェンジ

阿波海南駅の前には、モードインターチェンジが作られています。
この場所は阿波海南信号場と呼ばれており、阿佐海岸鉄道の阿佐東線(あさとうせん)はここから始まります。
DMVはモードインターチェンジに入りバスモードから鉄道モードへと移行します。レールと道路部分の間には、終端を表す車止めのマークがあります。

トランスフォームするDMV

写真:モードインターチェンジに進入するDMV

バスモードから鉄道モードへ


DMVはモードインターチェンジに進入すると一旦停止します。
そして約15秒かけてバスモードから鉄道モードへと移行するのですが、モードインターチェンジの横は見学スペースがありますので見ているだけでも結構楽しめると思います。
前側の鉄輪がゆっくりと車体持ち上げ、ゴムタイヤも浮き上がります。鉄輪はあくまでレール走行をする為のガイドとしての役割のため駆動力は持ちません。
モードチェンジが終了すると、運転手さんが下りてきて問題なくチェンジが行われたかチェックします。

駆動用のゴムタイヤ

写真:鉄道モードで走行するDMV
後輪のゴムタイヤはよく見ると2列になっており内側だけがレールに接地していることがわかります。
DMVはその軽さゆえにスリップしてしまう可能性があります。
後側の鉄輪は前側のように車体を持ち上げていませんが、実はこう見えて駆動用のゴムタイヤへの重量配分をリアルタイムで調整しているのです。まさに縁の下の力持ちといってよいでしょう。

阿佐海岸鉄道の路線図

写真:阿佐海岸鉄道の路線図(阿佐海岸鉄道HPを参考に作成)

DMVに乗ろう


阿佐海岸鉄道では現在2つの路線があります。
1つは 阿波海南文化村~道の駅 宍喰温泉(ししくいおんせん) までのルートです。
平日・土日祝日含め殆どがこのルートでの運行です。

2つめは 阿波海南文化村~海の駅むろと までのルートです。
こちらは土日祝日に1往復だけあります。注意点としては道の駅 宍喰温泉には寄りません。
DMVは観光客向けの乗り物で、店員も少ないので混みそうな時期は予約されることをお勧めします。
予約については、阿佐海岸鉄道のHPより可能です。

今回訪れたのは2021年12月26日で、開業翌日のため予約はほとんど埋まっていました。ここで注意点ですが、DMVはもともと定員が少ないため短距離での予約はできないようになっています。長方形は海部駅までDMVで行って帰りは歩きながら撮影をしたいと考えていたのですが予約ができないため、当日空きがあれば乗れるという状態でした。

DMVの車内

写真:DMVの車内の様子
丁度来たDMVに空きがあったので乗車することが出来ました。
DMVはトヨタのマイクロバスを改造して作られているので、車内の雰囲気はまるで路線バスのようです。バスモードから鉄道モードに移行すると前方の視界は少し上向きになります。

鉄輪が小さいので、レールのつなぎ目がもろに振動として感じられます。一般的な4軸の鉄道車両ではガタン・ゴトン・ガタン・ゴトンという音がしますが、DMVの鉄輪は2軸なのでガタン・・・ガタンという独特な音がするので新鮮です。まるでトロッコ列車に乗ってるような気分になります。

かつての乗り換え駅

写真:DMVと静態保存されているASA-101「しおかぜ」

海部駅は少し前まではJR牟岐線と阿佐海岸鉄道 阿佐東線の乗り換え駅でした。現在はDMV用の低床ホームが整備されていますが、旧ホームの施設もそのまま残されています。DMV導入前まで使用していた気動車ASA-101「しおかぜ」が静態展示されているのが見どころの一つです。
写真で見ていただくと良くわかりますが、DMVとASA-101「しおかぜ」のサイズの違いがよくわかります。

海部駅と純粋トンネル

写真:阿波海南駅に向かうDMVと純粋トンネル

別の意味で有名な海部駅


海部駅から阿波海南駅の方をみると、とても奇妙なトンネルがあります。このトンネルの名前は町内(まちうち)トンネルといいます。元々は山の中に掘られた普通のトンネルだったのですが、宅地開発で山が削られてしまいトンネル部分だけが残されてしまったため、このような独特のフォルムをしています。
山がないのにトンネルだけ残っているのです。まさに無用の長物。こういう不動産に付着した無用なのに保存(展示)されているものを『超芸術トマソン』と呼びます。
実は町内トンネルは『トマソン』界隈ではかなり有名なトンネルなのです。長方形も昔トマソンにはまった時期がありまして、その頃からこのトンネルの存在を知っていました。ハマる人にはハマると思うので、トマソンにご興味のある方はぜひ調べてみてください。

DMV

写真:3台のDMV

特徴的なカラーと名称


2022年2月現在、阿佐海岸鉄道のDMVは3両あります。
それぞれ特徴的な色と愛称が与えられていますのでご紹介いたします。
青:DMV-1号(愛称:未来への波乗り)
緑:DMV-2号(愛称:すだちの風)
赤:DMV-3号(愛称:阿佐海岸維新)

皆さんもぜひ、徳島に遊びに行かれた際は、世界初のDMVを体験していただければと思います。





■文・写真 : チャンネル長方形
※写真については一部四国の右下サイトより引用

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